「そうか。なにかあったら相談に乗るよ」

「ありがとうございます」

 店長は理解あることを言ってくれた。

 ただ、スタッフに対する義務的な言葉だったかもしれないけれど、あからさまに迷惑だという顔などせず、表面だけでもそう言ってくれたことを、嬉しく思う。

(私は優しいひとたちに囲まれてるな)

 バックヤードに戻り、エプロンを外しながら梓は噛み締めた。

(だからこそ、早く解決しないと)

 そう自分に言い聞かせ、荷物をまとめて、外に停めていた自転車を引き出した。

 だがすぐに思い直す。

 スマホを取り出した。

 熱がどの程度かわからないが、自転車に乗れないほどだったら酷だろう。

 一応、車で向かっておいたほうがいい。

 電話でタクシーを呼び、幼稚園まで向かう。