なにかしらが起こって連絡が来ることは、なんとなく予想していたことだったので、梓はそう動揺もしなかった。

 むしろ、熱の出る兆候を感じ取ってやれなかった自分を悔やむ。

「わかりました。お迎えに行きます」

『お願いします』

 それで電話を切った。

 申し訳ないと思ったが、店長にその旨を切り出す。

「わかったよ。大丈夫なのかい」

 店長は心配そうに聞いてくれた。

 百合子とその息子であるオーナーは、昨日客間を借りてしまったのだから事情は把握している。

 が、店長には詳しく報告していなかった。

 プライベートなことであるし、あまりひとに知られたいことではない。

「家のほうで少々ごたつきそうなんです」とだけ報告していた。

 だから店長も、それが理由の一端なのだろうと察してくれたようだ。

「……なるべく早く、なんとかしようと思います」

 うつむいてしまった。

 それでも言った。

 自分だけの問題ではないのだ。

 和もそうであるし、オーナー一家まで巻き込んでしまった。

 本当に、『なんとか』しないといけない。