沈黙が落ちる。

 梓はなにを言ったらいいかわからなかった。

 急なことで、気持ちが追い付いていないのはある。

 でもいつかは来ることだった。

 和臣がやってくることではない。

 父について、本当の話をすることが、である。

「……パパは遠くでお仕事をしているの」

 考えて、言った。

 子どもに話せる範囲で、それから自分の心が外に出せる範囲で、話そうと思った。

 梓が話をするのを、和は黙って聞いていた。

「パパが悪いことをしたんじゃないの。喧嘩をしたんでもないの。……一緒にいられなくなっただけ」

 梓の説明は、きっと和にとっての納得や答えにはならなかったのだろう。和が言ったことは不満げだった。

「どうしてけんかしてないのに一緒にいられないの?」

 答えられなかった。

 子どもに事情を話したところで理解できる内容ではないし、そもそも四歳の子にこんな醜い事情なんて、聞かせたくもなかった。