「……ママ」

 三人でそれを見送って、車が見えなくなってから、和が呟いた。梓の腰にしがみつく。

「……ごめんね、和……、ごめんなさい……」

 できるものならばへたりこみたかった。

 それはなんとか堪え、しゃがみこむ。

 地面に膝をついて、和を抱きしめた。

 和の体はあたたかかった。やわらかかった。

 今日、幼稚園で外遊びをしたのかもしれない、少し土っぽい香りがした。

(私のしたことは、本当に良かったのかな)

 もう一度、頭に浮かんでしまう。


 もしかしたら自分のことしか考えていなかったのかもしれない。
 和臣さんのことだけじゃない。
 和にとっても、なにも考えてあげられていなかったのかもしれない。


 そう頭に迫ってきてしまったのだ。

「梓さん、ひとまず落ち着いて? 家まで送っていくわ」

 その梓の肩に、百合子がそっと手を置いてくれた。

 混乱した頭の中に、その言葉が優しく響いた。