エリートSPはようやく見つけたママと娘をとろ甘溺愛で離さない

「か、帰ってください!」

 咄嗟に言っていた。

 和の手をぎゅっと握り、自分に引き寄せる。

 和も急に現れた知らない大人の男性と、この異様な空気に臆したのか、梓の腰にしがみついてくる。

「そう言われるのはわかっている。少しでいいんだ」

 しかし和臣もこのような状況になるのは想定内だったのだろう。穏やかな声で言った。

 けれど梓が同じようにできるものか。

 しっかり和の肩に手を置いて、言った。

「話すことなんてありません!」

 そう言い放った梓。

 不意に、肩になにかが触れた。

 はっとしたが、それは百合子のものだった。

「梓さん。なにか事情がおありなのね?」

 梓がシングルマザーとして働いていた以上、そうであって然るべきだ。

 でも今、味方になってくれるような百合子がいてくれることに、梓は心から安堵した。

 そのために少し心がほどけたのかもしれない。