その梓を守るように、一歩踏み出したのは百合子だった。警戒の声音で言う。

「どなたですか? 梓さんにどのようなご用事?」

 百合子こそ、明らかに祖母といった様子ではないのだ。

 和臣にとっては一体誰なのか謎だっただろうが、『誰だ』などと不審な顔はしなかった。

 代わりに奇妙なまでに落ち着いた声で言った。

「俺は……この子の父親です」

 梓の心臓が、どくん、と跳ねる。

 あまりいい意味ではなかった。

 冷たく、きんとするような感覚だった。

 その場の全員が息を呑んだだろう。

 子どもである和ですら、異様な空気に呑まれたに決まっている。

「……お父さん」

 呆然と、といった様子で百合子が呟いた。

 その声によって、梓の頭にじわじわと思考が戻ってきた。

 そう、和臣、和の父親、その通り……。