車に詳しくない梓ですらそう思い、でも別にその程度にしか思わなかった。

 車は縁がないのだし、ただ、和が飛び出さないように気を付けないとな、と思っただけだった。

 なのに、その高級そうに見える車は、カフェの前で停車した。

(ここへのお客さんだったのかな)

 そう思った梓だったが、数秒後、目を大きく見開くことになる。

「……梓」

 小さな音と共に運転席ドアが開き、出てきて、降り立ったのは和臣ではないか。

 もう四年も経っているのだ。

 体型や顔立ちこそほとんど変わらないものの、より精悍な様子になってはいたが、すぐにわかった。ネイビーのスーツを身に着けている。

「……っ!?」

 すぐにわかったのに、梓はなにも声が出なかった。

 ただ、息を呑むしかできない。

(どうして、なんで、今、ここがわかって、どうして……)

 疑問符ばかりがぐるぐると頭を巡った。