「ああ。まだまだ研修中だから、早めに行っておかないとなんだ」

 ちょっと困ったように笑った和臣。

 その表情に、梓も笑顔になる。

「頑張っていらしてすごいです」

「そうか?」

 褒め言葉に、和臣はくすぐったそうに笑った。猫っ毛の髪に軽く手をやる。

「……いつか梓をお嫁さんに欲しいから。今から一人前になれるように、頑張らないとと思ってるんだ」

 言われたことに、梓の胸の中が、かっと熱くなった。

 お嫁さんに……欲しい……。

 そんなことは、まるでプロポーズ予告。

 そんなふうに思ってしまったのだ。

 でもきっと、間違いではない。

 だって和臣は嘘をついたりする性格ではないのだから。

「……嬉しいです」

 ちょっとはにかんでしまいつつも、梓はそう言った。

 自分もそれを喜んで受けたいという気持ちは伝わってくれただろう。

 その証拠に、和臣はもっと優しい笑みになって、梓がかけていた口元までのシーツをそっと除けて、今度はしっかりくちびる同士を合わせてくれた。

「……待っていてくれよな」