元気に泣くその子に、梓は『和』と名前を付けた。

 言うまでもなく、和臣から一字もらった形である。

 一字の名前なのは、自分と同じになると思って決めた。

 読みは『のどか』。

 平和に、不安なく、元気に成長できるように。

 そんな気持ちと願いを込めた名前。

 名前通りに和は育ってくれた。

 まぁ、『のどか』の響きから連想する穏やかな性格とは、少し離れているけれど。

 社交的であるほかに、活発で積極的な女の子である。

 それでも不安が多いよりずっといい。

 二月という早生まれなので小柄なほうではあるけれど、幼稚園に入ってもそう大きな不安ごとはなく、ここまでやってきた。

 シングルマザーになった、あの波乱の経緯の結果とは思えないほど順調であった。

 今、梓は心から思う。

 和を産んで良かった。

 いや、和を授かって良かった。

 あの一夜は間違いなどではなかった。

 和臣と交際し、愛し合ったことも間違いではなかった。

 時間は短くても、こうして素晴らしい愛の証を梓は得ることができたのだから。