えっへん、とばかりの様子でいるけれど、その様子を見て梓は笑ってしまった。

 幼稚園に行くための服は、さっき一緒に着替えをしたから綺麗に着られている。

 ふわふわしたやわらかな茶色の髪も、梓が先ほどふたつ結びにしてやった。

 でも幼稚園指定の帽子はずり落ちそうだし、肩から掛けている園バッグから見えるのは……。

「ちょっと、それは幼稚園に持っていっちゃ駄目でしょう」

 最近、和が気に入ってずっと遊んでいる、かわいいピンクのステッキだ。

 日曜日の朝、テレビでやっているアニメの主人公が持っている魔法のステッキ。

 最近買ってあげて、まだ新しいものだ。

「ええーっ、結花(ゆか)ちゃんに見せるって言ったのぉ」

 梓が諫めたことには膨れられた。

 小さなほくろのある、右目元が細くなる。

 梓は困るやら微笑ましくなるやらだった。

 一人娘の和は物怖じしない性格だ。

 そのために、心配していた幼稚園入園もスムーズにいき、一年が過ぎた今ではお友達と毎日楽しく過ごしているようだ。

 結花ちゃん、というのは最近、一番仲がいい友達である。