「……梓」

 横までたどり着いたとき、和臣がやはり一瞬だけ梓を見た。

 すぐに視線は目の前に向ける。

 ぎりっと歯を食いしばるのが見えた。

「なに、奥さんまでいたわけ! はっ、そうして私を邪魔にするのね! いつでもそうよ!」

 和臣の見据える先にいたのは、美穂。

 憎しみの目で、ぎろっと梓に視線を向けた。

 その腕には和が、散々探した和が捕まえられていた。

 胸のあたりに腕を回され、苦しそうに顔を歪めていた。

 胸が圧迫されて、声も出ないという様子だった。

 痛いに決まっている、苦しいに決まっている。

 梓の胸が、まるで自分が捕らえられているように痛み、叫ぶような悲鳴が出ていた。

「和……!」

 緊迫した空気の中を、切り裂くような悲痛な声。