梓は、すぅ、と息を吸い込んだ。

 落ち着け、と自分に言い聞かせる。

 今は一刻でも早く、和を見つけること。

 そして保護すること。

 そのためには自分が落ち着かなければいけないのだ。

 はぁ……と大きく息を吐いてから、足に力を込めた。

 スニーカーの足で、だっと地面を蹴る。

 和臣と違って、走るのには慣れていない。

 走ればまったく速さが違うので、和臣は「先に行く」と言ったのだ。

 でも、自分は自分のできる精一杯で。

 すぐに息は上がって、苦しくなった。

 それでも我慢して走る。

 心臓は違う意味でもバクバクしていた。

 でもためらわない。

 和のために強くいようと決めたのは自分。

 それなら、もう負けない。

 絶対に取り戻す。

 絶対に、奪わせたりしない。