穂住はまだぐすぐすしていたけれど、すっと一方を示した。

 そちらになにがあるかは知っている。

 公園だ。

 和を連れて遊びに来たこともある。

「ありがとう。悪いな、ちょっと我慢してくれよ! 美穂のところまで行くぞ!」

 不意に和臣が穂住の体を持ち上げた。

 ひょいと抱っこする。

 予想外だっただろう、穂住は目を丸くした。

 目を白黒させながら、それでも和臣にしがみついた。

「すまん、梓! 先に行く! ひとまず公園を目指してくれ!」

 すごい勢いで走り出しながら、和臣は一瞬だけ梓を振り返った。

「う、うん!」

 あまりに急な展開に、梓も穂住と同じで目を白黒させてしまったけれど、それでも頷いた。

 和臣はこわばった顔であったが、それでも梓を安心させるかのように、笑みを浮かべた。

 そして穂住を抱えたまま走り走っていった。