「のどかがっ……、怒ったんだっ、ねえちゃんが、おれを怒ったから、それで……、おれを……」

 穂住の言葉は断片的で、しっかり繋がってはいなかったけれど、なんとなく想像はついた。

 和は穂住と美穂を見たのだ。

 しかし幼稚園でのときのように、美穂が穂住にきついことを言ったのかもしれない。

 それで、つい『怒って』しまった。

 そして、それに激高した美穂が……。

 そこまで想像して、梓はぞくりとした。

 もっと最悪の事態が頭に浮かんでしまったのだ。

「そうか。それは怖かったよな」

 和臣のほうは落ち着いていた。

 固い声で穂住に言い、肩にそっと手を置く。

 その優しい手つきに、穂住の感情はますます高まったらしい。

 再び泣き声になってしまう。

「あんな怖いねえちゃん、いやだぁ……っ、優しい、ねえちゃん……でっ、いてほしい、のにぃ!」