「穂住くん!? どうかしたのか?」

 和臣も動揺したらしい。

 駆け寄り、膝をついた。

 だが穂住のほうは、びくりと震えた。

 あのとき、幼稚園で和臣に叱られているのだから。

 だから和臣は怖がらせないようにだろう、笑ってみせている。

「なにもしないのに怒ったりしないよ。迷子になったのか?」

 穂住は和臣に返事をしていいのか、つまり気を許していいのかためらっているようだ。

 うう、とか、ぐす、とか泣き声だけを洩らしている。

 梓はその二人にそっと近寄った。

 自分もしゃがみこむ。

 穂住の顔を覗き込んだ。

 涙でぐしゃぐしゃの顔は痛々しかった。

 この子は、確かにちょっとやんちゃなところがあるのかもしれない。

 でもまだ五歳の子だ。

 本当に悪い子だと決めつけるのは早計だ。