梓の頭に嫌な想像がぐるぐる巡ってしまう。

 あれほどの仕打ちをされた人物とはいえ、こんなことを疑いたくなんてない。

 ……和を誘拐したのではないか、なんてこと。

「いや、そこまではわからない。ただの偶然の可能性が大きいだろう。でも」

 和臣も思考は同じなのだろう。梓の肩にもう一度手を置いて、落ち着かせるように言った。

 自分に言い聞かせるようでもあった。

「少しでも可能性があってしまうなら……そこを辿るのがいいんじゃないか」

 しかしやはり可能性はあるのだった。

 おまわりさんもふむふむと聞き、ぱらぱらと手帳を繰った。

「なるほど。調べてみる価値はありそうですな。その方のお宅や連絡先はわかりますか?」

「連絡先はわからないです。だけど家はわかります。この近くだったはずです」

「そうですか。では応援を頼んで、そちらへ向かわせましょう」

 そのようなやり取りで行動方針は決まった。

 おまわりさんはすぐにスマホで応援というのを連絡し、頼んだようだった。

 梓が「自分たちはどうしたらいいのか」と思ったときだった。

 和臣の手が、ぎゅっと梓の肩を掴んだ。

「美穂の家に行ってみよう」