(駄目だ、泣いてる場合じゃない)

 自分をなんとか叱咤して、梓は努めて冷静になるように話した。

 和臣は全部聞いてくれて、そしてすぐに言った。

 迷う間もなかった。

『わかった。これから行くよ』

 きっぱり言われたことには、むしろ梓のほうが戸惑った。

 今日は朝から出ていったとはいえ、夕方が終わる頃までは仕事という話だったのだ。

「え、……、お仕事、まだあるんじゃ……」

 戸惑いながら言ったけれど、和臣はきっぱりしていた。

『警護の外出は入ってないから大丈夫だ。それに、梓と和より大事なものなんてない』

「和臣さん……」

 はっきり言い切ってくれた和臣。

 梓は呆然と呟いた。

 まさかすぐに来てくれるなんて思わなかった。

 なにより大事だと言ってくれるなんて。

『三十分以内に行く。すぐ上に言って手続きしてくるから、待っててくれ』

 すでになにか整理をはじめたのか、バタバタという音が聞こえはじめた。