「……私も、今があってとっても嬉しいよ」

 今度はためらわなかった。

 笑顔で、はっきり言う。

 和臣は表情を崩した。

 やわらかな笑顔、とても幸せだという表情になる。

 抱いていた梓の肩、置いた手に少しだけ力を込めて、そっと抱き寄せた。

 それで二人はもっと密着する形になる。

「梓、愛してる。恋人としても、妻としても、ママとしても。ずっと愛してる」

 耳元で、梓だけに聞こえるような小さい声……とても穏やかで、優しくて、甘い響きで言われて、梓の胸に幸せが広がった。

 胸の中が、あたたかさで満ちていく。

「……私もだよ」

 自分からも身を寄せて、静かに言う。

 それだけできっと伝わってくれるから。

 そのあと、和臣がちょっと体を引いて、梓を見つめて、優しく頬を包んできて……。

 二人だけの密かなキスは、紅いカーテンが優しく包み隠してくれていた。