席は二人掛けのソファがひとつ。

 その前にテーブル。

 そして窓の外から外の風景が見えた。

 冬の折だ。

 樹々は葉を落としてちょっと寂しい様子だったけれど、差し込む太陽の光は、真冬よりずっと明るいものになっている。

 さらに、二人が並んで腰かけているソファのうしろには(あか)いカーテンが引かれていた。

 ちょっとやそっとでは、お客の過ごす様子が見えないだろう。

 それが半個室といえるゆえんで、この作りも、ソファや木彫りのテーブルも、多分、恋人同士が静かに過ごすためのものなのだ。

 ショッピングモールの一角としては、ロマンチック溢れる店であった。

「美味そうだな」

 もう一度、和臣が言った。

 梓はその意味をすぐにわかってしまって、でもそれゆえにくすぐったくなった。

 でもためらったのは数秒だけだった。

 フォークでケーキをすくって、そろっと和臣のほうへ差し出す。

 くす、と和臣が笑う。とても幸せそうな笑み。

 口を開けて、ケーキを食べる。

 いわゆる『あーん』であるが、なんだか自分でケーキを食べたのと同じ甘さのような感覚が、梓の胸に広がる。

 くすぐったいながら、とても心地いい感覚。