「これも特別なときに着たいな」

 勧められた長袖ワンピースを試着して、梓は姿見の前で、くるっと回ってみた。

 試着した一着は、やわらかなピンク色だった。

 くすみカラーといわれる落ち着いた色合いで、そろそろ二十代も終わりに近付いている身でも、浮くことはないなと感じて安心した。

「ああ、じゃあまたデートに行こう。和と三人でデートにしてもいいし」

「うん!」

 満面の笑みで頷いた梓。

 ピンクのワンピース以外にも、カーディガンや春物ジャケットなどを買ってもらった。

 こんな贅沢、なんて謙虚な梓は思ってしまったけれど、和臣はなんでもないという顔で財布からカードを取り出しながら、しれっと言った。

「いつも家事を頑張ってくれてるし、俺もこういうときのためにも仕事を頑張ってるんだ。格好つけさせてくれよ」

 そんなふうに言うものだから、梓のほうが恥ずかしくなった。赤くなった顔で、小さくお礼を言う。

 格好つけさせて、なんて言わなくてもじゅうぶん格好いいのに、と内心で思った。

 やっぱりちょっと恥ずかしいから、伝えるのは帰ってからにしよう、と決めたけれど。