「あのワンピース……気軽に着ていいものじゃない、って思って……、一回しか着てないんだ」

 懐かしい気持ちと、ちょっと胸が痛む気持ちを両方覚えながら、梓は言った。

 少しうつむいてしまった。

 黄色のワンピース。

 試着したそれは似合っているように梓の目に映ったし、和臣はもっと手放しで褒めてくれた。

 そして買ってくれたのだ。

 勿論、とても嬉しくなって、大事にしないとと思って、あのとき……和臣と初めての泊まりをしに行ったときしか着なかったものだ。

 それ以来、しまいこんでいた。

 捨てるなんてとてもできなくて、大切にしまっていたのだ。

「そうか。じゃあ、次の夏に着てくれよ」

 うつむいた梓の顔を上げさせるように、和臣が優しく言った。

 その通り、梓は顔を上げた。

 和臣の優しい眼差しが、梓の瞳に映る。