エリートSPはようやく見つけたママと娘をとろ甘溺愛で離さない

『あっ、これ……』

 トルソーに着せられて、一番いい場所に展示してあった、一着のワンピース。

 きっと新入荷か、人気商品だったのだろう。

 来たる夏を先取りするような、優しい黄色で裾に花柄が入った、とても素敵な一着だった。

 梓がそれを目に留めたのはたった数秒で、特に『気になった』とも言わなかったのに、その様子だけで和臣は言ったのだ。

『ああ、素敵だな。試着してみたらどうだ?』

 言われた梓のほうが驚いてしまった言葉だった。

『えっ……、いいんですか?』

『勿論だよ。梓の肌色や髪色にも似合うと思う』

 そう言って、にこっと笑ってくれた和臣。

 梓は大いに照れながら、勧められたままに、そのワンピースを試着したのだ。

 ああ、そうだ。

 梓の頭に、別の想い出も浮かんだ。

 あの百貨店で自分は言ったのだ。

『ここ、展望台もあるんですね』と。

 そして和臣は『じゃあ今度、行ってみるか?』と言った。

 再会してから、展望台にも連れて行ってくれたのに、それだけでは終わらなかった。

 想い出を大切にしてくれる和臣は、とても優しい以上に、とても梓を愛してくれている。

 実感して、胸が熱く、またあたたかな感覚でいっぱいになってしまった。