「今度は和も連れてこよう」

「うん。もうだいぶ人混みでも落ち着いていられるようになったからね」

 今日は二人だけのお出掛けだったから、そのように言い合う。

 朝、幼稚園に送っていって、帰りは実家の母、和にとっての祖母が迎えに行ってくれることになっていた。

『パパぁ、ママぁ、でぇと、楽しんでねー!』

 幼稚園の前で、手を振りながらそんな、ちょっとませたことまで言うようになった和。

 梓は少々気恥ずかしくなってしまったくらいだ。

 梓のそれを受けて、和臣が違う意味でだろう、しみじみと言った。

「ああ。もう五歳になるんだもんなぁ」

 あと十日ほどで和の誕生日なのだ。

 二月の終わり。

 長い冬が明けて、春がくる季節に産まれた和。

 あれからもう五年。

 妊娠してからだともう少し長い。

 いろんなことがあった。

 シングルマザーとして産み、育てる決意をした。

 実際、三年と少しはそうして育ててきた。

【ゆずりは】で働いて、オーナーの母・百合子に時々、預かってもらって……。