もう固い顔はしていない。

 それどころか微笑が浮かんでいる。

「そう、……かな。ありがとう。でも、パパに負けないくらい、強いママになりたいって思ってたの」

 優しい会話が交わされた。

 しかしここはやはり幼稚園なのだ。

 しかも朝であり、早めに登園してきたとはいえ、言い合いになった間にだいぶ時間が経ったはず。

 そろそろ通常の時間に登園してくる親子がたくさん来てしまうだろう。

「先生、騒ぎにしてしまい、申し訳ございませんでした」

 帰り際、和臣は深々と頭を下げていた。

 梓も隣で同じようにする。

「いえ、私こそ、力が及ばなかったです。申し訳ございません」

 頭を下げ合う形になった。