「え、いいんですか?」

 名前と所属、それから携帯番号などが書いてある、シンプルな名刺だった。仕事用のものだろう。

 でもそんなものをもらえてしまうなんて。

 梓は差し出された名刺をとっさに受け取ったものの、目を白黒させてしまった。

「もちろん。懐かしい話をしたいしさ」

 なのに和臣はにこっと笑って、梓がもっと嬉しくなってしまうことを言う。

「あ、ありがとうございます!」

 お礼を言う声は弾んだ。

 そして和臣は今度こそ「ほら、遅れるだろ」と先輩に連れて行かれてしまい、梓は二人に挨拶と会釈をしたその場所で、少しぼんやりしてしまった。

 まさかこんな場所で再会できるなんて思わなかった。

 警察官になっていたのだという。

 それも警視庁勤務。

 エリートか、エリート候補なのだろう。

(……でも、和臣先輩ならそうであっても自然かも)

 思って、くすっと笑ってしまった。

 高校時代の彼が、立派になっているのがなんだか自分のことのように嬉しく感じてしまった。

 憧れていたのだから当然だ。