「わかったよ。……梓! そろそろ寝る支度をするんだよな?」

 不意に梓にお呼びがかかった。

 梓は、つい見とれてしまっていた、とハッとする。

 和臣のパパとしての顔に。

 そして、心から和を守りたいと思ってくれている気持ちに。

「あ、うん。ちょっと早いけど、絵本を読むならちょうどいいかな」

 返事をする。和臣と視線が合った。

 視線の先の和臣の顔は微笑だった。

 梓にまで安心をくれるような、優しい笑み。

「よし。じゃあ和、まず歯磨きをしようか」

「するー!」

 ひょい、と和の体を軽々持ち上げ、和臣は和を床に下ろした。

 和も明るい返事をする。

 先ほどまでとはまるで違った様子だった。

 そのまま二人は洗面所へ向かっていった。しっかり手を繋いでいる。

 やはり数秒、梓はその後ろ姿を見送ってしまった。

 和臣のパパとしての顔が好きだと思う。

 自分がママとして不足だとは思わない。

 それは和が自分を信頼して、ここまで立派に育ってくれたことからの自信だ。

 ただ、ママにはできないこともある。

 もしくは、梓という人間にできないこともある。

 きっと和臣はその部分を補ってくれていると言っていい。

 二人で子育てをできるのは、なんて幸せなんだろう。

 そう噛み締めた梓だった。