「では、よろしくお願いします」

 それだけ言い、梓はぺこりと頭を下げて、帰ることにした。

 先生も慌てたように梓に視線を向ける。

「はい、こちらでもよく見ているようにしますので」

 それでおしまいになった。

 帰る前、梓は園庭から見える和の教室をちらっと見ていった。

 例の男の子というのは同じクラスではないのか、それともまだ来ていないだけなのか、とりあえず、それらしき存在は見えない。

 それどころか、和は笑顔だった。

 転園してから仲良くなった女の子の友達数人と、明るく話をしているようだ。

 あの調子なら、あの子たちが味方になってくれて、いじめられっぱなしということはないだろうけど。

 様子を見て、梓はそのように考えた。

 心配は去らないけれど、孤立してしまっているのではないかという不安は、とりあえずしなくて良さそうだ。

 その点だけでも、少しだけほっとできた。