遅くになったときはいつもそうするように、和臣は寝室へそっと入り、「ただいま」と、起こさない程度の小さい声で言った。

 優しいパパの顔をする和臣を見ていると、梓はいつも安心を覚えてしまう。

 和も夢の中でそう思ってくれるといいけれど、とも思った。

 そして、和臣が夕食を食べ、梓が向かいの席でお茶を飲んでいる時間に、先ほど、和から聞いたことを和臣にも話した。

「それは困った」

 優しいパパの顔で、和臣は眉根を寄せる。

 自分の娘の痛みを、自分のことのように感じている、そんな顔だ。

「うん、子ども同士のことだから、先生にまず相談しようと思うの」

「それがいいだろうな」

 梓の提案を受けて、もぐ、とご飯を噛み締めながら和臣は頷いた。

「早く解決するといいんだけど」

 ため息をついてしまいそうなのを我慢して、梓はそう言った。

 和臣はやはり頷く。

「大丈夫さ。今の先生もいい先生なんだろう。きっと解決してくれるよ」

 勇気づけてくれる和臣。

 今度、頷くのは梓だった。