挨拶と遊びに行くのが一度に済むのでそこは助かったが、そのぶん、和臣が運転する距離はだいぶ長くなってしまった。

 体力のある和臣とはいえ、疲れただろう。

 自分は乗っていて和を見守っているだけだったのが、申し訳なくなったのだ。

「そんなことないさ。あと三十分くらいで着くし」

 なのに和臣はミラー越しにちょっとだけ笑顔を向けて、そう言う。

 梓も直接見えなくても笑顔を浮かべた。

「私も免許、取ろうかなぁ」

 最近、たまに頭に浮かんでいることを口に出した。

 梓は車の免許を持っていなかった。

 取る機会がなかったのだ。

 学生時代はずっと都内で暮らしていくのだろうな、というつもりでいたから、免許を取りには行かなかった。

 埼玉に引っ越して、和を育てることになってから、それを少々後悔してしまった。

 子どもがいる身としては、免許やマイカーがあるほうが、どうあっても便利だ。

 ただ、当時の収入ではマイカーなど持てなかっただろう。

 免許があっても現実的ではなかったから、諦めていただけだ。