「ああ、やっぱり小弓川さんだ! 久しぶりだな! まさかこんなところで会うなんて。元気にしてたか?」

 顔を明るくした和臣の表情を見て、梓は本当の意味で理解した。

 目の前にいるこのスーツの男性が和臣なのだと。

 どうしてこんなところにいるのかはわからなくても、再会してしまったのだと。

「はい! 和臣先輩もお元気そうで……」

 話が弾みそうになったのだが、そこでうしろから声がかかった。

「おい、七瀬。どうした? 知り合いか?」

 七瀬、と和臣の姓を呼んできたのは三十代くらいの男性だった。黒髪をスポーツマンのように短く刈り込んでいて、同じくスーツ姿だ。

 和臣は彼を振り返って、ちょっと気まずそうな顔をした。

「あ、はい。すみません。高校の後輩で」

 どうやら先輩か上司といった雰囲気だった。

 どうして目上のひとと一緒に警察署なんてところにいるんだろう、と思った梓だったが、そのあと和臣が向き直って説明してくれたことには仰天してしまった。

「俺、警察に入ったんだよ」

 つまり警察官ということだ。

 それなら警察署にいてもなにも不思議でないどころか、自然であることだった。

「そ、そうなんですか!? すごいですね!」

 梓は目を真ん丸にしたのち、明るい顔になっていた。

 高校時代、あんなに憧れて、伝える気はなくても恋をしていた相手なのだ。

 そんなすごい職業に就いていたなんて知れて、嬉しいに決まっている。

「ありがとう。いつもは警視庁にいるんだけど、今日は用事で先輩とこっちに来てたんだ」