軽く腰を上げて、自分からも和臣に触れ合うほど近くへ移動した。

 それで梓はしっかり和臣の腕の中に捕まえられる形になる。

 梓の鼻腔に流れ込んできたのは、シャンプーの香り。

 ボディソープの香りも同時に。

 清潔で優しいこの香りを、ここまで近くで感じられることは、あまりない。

 だからこう感じられれば、幸せな気持ちでいっぱいになってしまう。

 和臣の言った通り、恋や愛で満たされる時間なのだと実感できるから。

 ソファの上で寄り添い、抱き合った二人。

 今だけは『和の両親』であるほかに、『愛し合う二人』であった。

 こういう時間は、和がまだ小さくてあまり目を離せない年頃である以上、あまり機会がないことだ。

 だからこそ特別に感じられるのだ。