ちなみに、和はもうとっくに眠りについていた。

 寝室のいつも眠っているベッドで、梓が寝かしつけはじめて三十分もしないうちに、くぅくぅとかわいらしい寝息を立てて寝付いたのだ。

 和の寝つきが今までより、良くなった、と梓は感じていた。

 以前だって梓を信頼して、安心してくれていただろうが、その安心がもっと大きくなったのだと思う。

「ママとしても大変だろうに、家のことも完璧にしてくれて……、頼ってばかりだなと思うんだ」

 和臣は手を伸ばし、ティーカップを手にしながらそう言った。

 その言葉で梓はやっと、なにに対してお礼を言われたのか知る。

 自然に笑みが浮かんでいた。

 そんなことは母親で、妻として、当然だというのに、お礼を言ってくれる和臣は本当に優しいひとだ。

「ありがとう。でも和臣さんこそありがとう。お仕事、大変なんでしょう」

 遅くなる日が多いことも、少し疲れた様子で帰ってくることもある。

 それは仕事に一生懸命だからに決まっていた。

 なのに和臣は紅茶をひとくち飲んでから、笑顔で首を振る。

「梓と和のためと思えば、余計身が入るようになったくらいだよ」

 そうして前向きなことを言う。

 梓は自分も手にしたティーカップ、その中身よりもっと熱い気持ちを感じてしまった。