『その日』はとてもよく晴れていた。

 ハレといえるこの日をお祝いしてくれるかと思うほどの、からりとした清々しい青空だった。

「梓、これからはずっと離さない。俺と一緒に未来を歩んでくれ」

 三人で訪れたホテルのティールーム。

 テラス席からは、美しい庭園が見える。

 白やピンクの大ぶりの花が咲いているのがよく見えた。

 秋空が爽やかな空気を運んでくる中で、向かいに腰掛けた和臣が、すっと小さな箱を差し出してきた。

 その中には、細くて繊細な作りの、ピンクゴールドの指輪が入っている。

「……ありがとう。私こそ、ずっと……一緒にいてください」

 ためらわなかった。

 もう、このひとの手を取ろうと決めていたのだ。

 だからこの指輪とプロポーズは形式美ともいえるかもしれないけれど、きっと二人ともそうは思っていなかった。

 二人のこれからをはじめるのに必要なことで、大切なことだ。

 形にして表すことで、絆はもっと、強くなることだろう。