夫婦という関係だけではない。

 いつまでも、恋という気持ちで繋がっている関係も一緒に。

 なんて素晴らしいことだろう。

 梓はそう噛み締めた。

 素晴らしくて、幸せなことだ。

 本当に、ここから改めてはじまる。

 夫婦としても、親としても、そして、恋人としても。

「……ありがとう」

 梓はそっと和臣に身を寄せた。

 夕暮れのオレンジが、濃くなっていて美しかった。

 そのあと和臣が梓の肩に触れ、自分に向き合うようにさせてくる。

 優しく頬を、あの大きな手が包んできた。

 どきどきしながらも、意味なんてすぐにわかったし、そうしたいという気持ちが自分の中にもはっきりとあった。

 よって梓は静かに目を閉じた。

 頬を包んだ手が、顔を少しだけ上向かせてきて、そしてやわらかなくちびるが触れてきた。

 ふわりとソフトに触れた、あたたかなキス。

 時間にするなら四年ぶりだ。

 梓の体の中に、幸せな気持ちが満ちていく。

 まるで誓いのキスのようだった。

 数秒で終わってしまったけれど、きっと永遠だっただろう。

 ひとに見られてなかったかな、と気恥ずかしくなったのは、和臣と離れてからだったけれど、「行こうか」と和臣に促されて振り返った展望台の中は、誰もいなかった。

 オレンジ色のやわらかな光が、梓と和臣の二人を優しく包んでいた。