どうしよう、と思った。

 判明して安心した気持ちはある。

 ただ、もっと大きな問題はやってきてしまった。

 診察もお会計も予約も、すべて終わって帰路に就いたとき、梓は小さくため息をついてしまった。

 産みたいとは思う。

 でも本当に叶うだろうか?

 シングルマザーなんていまどき珍しいものではないけれど、自分がそうなるなんて思いもしなかったし、大変な道であることくらいは想像できる。

 無意識のうちに、お腹に手をやっていた。

 小さな命が入っているお腹。

 今はまだ膨らんでいないけれど、勿論動きが感じられるはずもないけれど、手の下からなにか存在が伝わってくるような錯覚を覚えた。

 不意に泣きたいような気持ちが込み上げる。

(……本当なら、愛の証と喜べるはずだったのに)

 そんなふうに思ってしまったのだ。

 でもすぐにその気持ちは自分の中で否定する。


 なにを、馬鹿なことだよ。
 だって自分で決めたんじゃない。
 こんなことになるとは思っていなかったけど、少なくとも。
 和臣さんのそばにいないことを決めたのは、私なんだから。