その4
夏美



「…それは事実ね、実際。私は現役を退いたけど、南玉連合のこれからの方針はね…、何しろ多くの猛る女達を糾合させ、適材適所でその人材を生かして可能な限りは組織を大きくしていくこと…。そういう方向性で取り組んでるところなの。ただね、我々の基本はあくまで、紅子さんの赤塗り路線という精神に則るわ」

「はあ…」

「ふふ…、まあ、ちょっと難しいわよね、中学生のあなたからしたら。今日いきなりすべては理解できないだろうから、この辺はまたにするけど、要は今後の南玉はケンカなんかやったことない子も必要になるの。その何故かも話が長くなるし、今日は省くわ。そこであなた…、人をまとめる能力に優れてるとか…」

「あの…、自分ではどうなのかなってとこです」

「じゃあ、あなたのお友達の言ってた、去年のクラスでのトラブルとかであなたがやったこと、事実?」

「まあ、だいたいは事実です」

「そう…。もし、そういう身のこなしが出来るのなら、是非、今の南玉には欲しいわね」

参ったわ…!

こうも絵に描いたように、タッコ達が言っていた通りなんて…

野上さんの口からは、”ケンカをしたことなどない子でも”と、はっきり聞いたし…


...


「あなたが南玉に加入したい気持ち、それが本気なら、OG連のトップに引合せるわ。その人がOKなら、それで決まりよ。うん…、こう面と向かっても、私の目からはあなた、いいわ」


「…」

私は正直、嬉しいという気分より、戸惑いの方が強かった

この時はね…


...


その2日後…、私は同じ店で、今度はOGのトップという甲斐由美子先輩と面談した

ここでもマンツーマンの二人ということで、野上先輩は同席しなかったわ

ところが…


...


その大柄なおかっぱ頭の、私と同学年という少女が店に入ってきたのは、甲斐さんとの話が30分くらい過ぎた頃だった

もうこの時には、甲斐さんの私への”面接”は終了していて、なんと”合格”の言を頂戴していたんだよね

...


「…じゃあ、あなた、来年高校に上がったら来なさい。ええと、たしか滝が丘受けるんだったかしら?」

「はい。滝が丘では陸上部に入って、まずは紅丸さんが実現された混合駅伝への出場を目指します!」

「うん、いいわね…、それ。私たちとしても、来春の第2回大会ではぜひ、南玉連合メンバーのあなたに出場願いたいわ」

「では、南玉連合に加わっても、部活は優先していいんですよね?」

「当たり前じゃないの。ふふ…、相川さん、玲子からはちゃんと聞いてないかもしれないけど、南玉連合がメンバーを増やすのはね、なるべく多くの高校にメンバーを置きたいってのもあるのよ。…その目的の一つは、男子も含めたフツーの一般中高生とも密接につながりを持つことなの」

「…」

”一般生徒との親密なつながり…‼”

この甲斐先輩の言葉にある種の衝撃を受けたことは、今でもよく覚えているわ


...


「…なにしろね、来年の新入メンバーは過去最高になるわ。しかも質的にも今までいなかった人材がどっと入る。あなたもその中の一人よ。ああ、間もなくもう一人、ここに来る子もね、来年高校入ったら南玉に加わることが決まってるの。いい機会だから、今のうちに面識を持っておきなさい」

「はい…」

そして、”その子”が大柄なおかっぱ頭、刃根達美だった…

達美とは、ここで初めて会うことになった訳よ