「ちょ…ちょっと、雛形さん!
教室で叫ばないで!」
「だって……成瀬くんのお母さんが
あの大人気女優の……
鈴原……お…うぅぅうぅぅ……」
私は叫び声が出なくなった。
焦り顔の成瀬くんの手で
口を塞がれたから。
「あっ…ごめん。
雛形さんの口に
僕の手なんか押し付けちゃって」
顔を赤らめ、パット手を離した成瀬くん。
冷静になった私は
「こっちこそごめんね」と
顔の前で手を合わせる。
鈴の音は、大人気劇団。
公演のチケットは、発売と同時に即完売。
その劇団の座長が母親だって
クラスメイトにバレたら
成瀬くんは今みたいな
平穏な高校ライフを
おくれなくなっちゃいそう。
だって劇団鈴の音の座長は
ドラマや映画でも大活躍の
実力派女優なんだから。
成瀬くんは口元を手で隠しながら
コソコソと声を細めた。



