明日翔くんの求愛行動は間違っている




 腰まで伸びる緩く波打つ髪を

 指でこすりながら

 じっと足元を見つめていたその時



 階段を踏みしめるような足音が

 フッと消えた。



 偉人のオーラを感じ取る私の左肩。

 異様なほどオーバーに震えだす。




 ひぃあ?

 わたし、頭をなでられてる?


 この温かいぬくもりは……

 明日翔くんの手のひらだよね?




 座席に座ったまま

 反射的に顔を上げた私。



 私の左隣の通路には

 立ったまま微笑む明日翔くんがいて


 
 彼は私の頭から手を離すと

 今度は黄色いネクタイをさすりだした。




「俺のネクタイ
 身に着けてくれたんだな。嬉しいよ」



 マママ……マイクが

 オンになってますけど……



 明日翔くんの優しくて甘い声が

 高性能のスピーカーから

 大音量で流れちゃってますけど……




「受け取ってくれた? 
 ネクタイに託した俺の気持ち」



 愛おしい人を見つめるような

 彼の甘い視線が

 なぜか私の瞳を貫いてくる。