明日翔くんの求愛行動は間違っている



 理事長室のソファから、立ち上がった俺。


 俺の瞳には間違いなく

 恋の闘志が燃えたぎっているだろう。



「俺、今すぐ
 花湖のところに行ってくる!」


 勢いに任せ

 理事長室から出ていこうとしたけれど……


 冷静さゼロ。

 恋の暴走で何をしでかすかわからない。


 俺の性格を熟知しているノエルは

 そう察知したんだろうな。



「暴れ狂う感情が静まるまで
 お茶でもいかかですか?」

 最上級のおっとり笑顔を、俺に向けてきた。



 女性に間違われるほどの

 美顔を持ってるせいか

 ノエルは一見、か弱そうに見えてる。


 でも、火事場のバカ力が

 発動するときの握力は、怪人並み。



 肌に跡が残りそうなほど強い力で

 俺の腕を掴んでいる。


 痛いよ。 手を離せよ。


 怒り魔の俺なのに

 怒鳴り声を吐き出せなかったのは


 俺を優しく見つめるノエルが

 俺の心に寄りそおうと努力してるって

 ひしひしと伝わってきたから。