明日翔くんの求愛行動は間違っている




 私の横髪は、右と左に一本ずつ

 緩い三つ編みができたらしい。


 それ以外の後ろ髪は

 椅子の座席にギリつかないところまで

 垂れている。



「ねぇ花湖、今日は
 どのゴムで縛ればいい?」


 後ろからハテナが飛んできたから


「今日はこれで」と

 私は手首に通してあったゴムを手渡した。



 私を覗き込む沙織ちゃん。


 何か言いたそうな灰色の目で

 私を見つめてくる。



「また黄色? 
 花湖って黄色が好きだよね?」


 ……うっ、そこを突っ込んできたか。


「まぁ……黄色は嫌いじゃないけど……」


「なんで?」


「なんでって、別に理由なんてないよ」



 うわぁぁぁぁ、言えない。

 親友にも言えない。


 『黄色は推しカラーです!』なんて。