出てこないで。


 そう願っても止められない、大粒の涙。



 大好きな人に

 ブサイクな泣き顔なんて見せたくない。



 そんな悪あがきみたいなプライドが、顔を出し


 私は明日翔くんに笑顔を見せようと

 頑張ってはみたけれど……無理だった。


 結局、作れたのはお粗末な表情。


 大粒の涙をこぼしたまま

 なんとか口角を上にあげただけ。




 明日翔くんはというと

 私を見つめたまま固まっている。


 驚いたように目も口も開けて

 一言も言葉を発しないで。
 




 明日翔くんがソファに座り

 固まっているうちに


 私は床に落ちている

 自分のリボンを拾い上げ


 ガチャリと鍵を開け


 理事長室から飛び出した。






 床に零れ落ちていく、涙の雫。


 拭っても拭っても溢れてくる。


 こんな惨めな姿では、教室になんて戻れない。




 私はその足で保健室に行くと


「お腹が痛すぎなので
 ちょっと休ませてください」


 ヘタなうそをついて

 保健室のベッドに潜り込んだ。