「それでこんなとこに連れてきて何の用なの?」


「お前に聞きたいことがあるんだ」



大鴉くんはまっすぐ私を見つめた。


真剣な目で見つめられて思わずドキッとしてしまう。


まさかここに来て告白、みたいなベタな展開はないよね?



「聞きたいことって?」


「カラスは好きか?」


「へ?」



何を聞かれるのかと身構えていると突拍子もない質問ばかりで拍子抜けする。


こんな改まってカラスについて聞かれるとは……。


もしかして大鴉くんもカラス好きなのかな?



「好きだよ。昔からなんでか私の周りにカラスが寄ってくるんだけど、すり寄ってきて可愛いなって」


「そうか。それはよかった。俺にとってカラスは大事な存在だからな」



大鴉くんは何かを思い出すように目を細めた。


彼にも私と同じようにカラスとの思い出があるんだろうか。



「そっか」


「お前、昔……いや、なんでもない」



何かを言いかけてやめた。


続きが気になって大鴉くんを見るがもう続きを言う気はないらしい。



「それじゃ戻るか」


そう言って大鴉くんは出口へ向かって歩き出す。



「え、それだけ?」



それ聞くためだけに私をここに呼んだの?


それなら教室でもよかったじゃん。


私の質問に対して少し考える素振りをしてから大鴉くんは口の端をニヤリと上げた。


なんか嫌な予感。


そう思ったときには時すでに遅し。


チュッと音を立てて頬にキスされる。



「な゛!?」


「物足りないなら最初からそう言えよ」


「なわけないでしょ!」



なんでそうなるの!?


てかキス二回目……!


今回はほっぺだけど。


私の怒号もお構いなしに大鴉くんは機嫌良く鼻歌を歌いながら屋上を出ていった。




そんな私達の姿を数羽のカラスが見ていたことに私は気付かなかった。