その6
夏美



「それを阻止する方策を、緒方さんは持ってるのね?」

「うん。端的にいって、分断作戦ないしは引きはがし戦略よ」

「要するに、仲間同士を分裂させるってこと?」

「単に仲間同士だけじゃない。ここがポイントね。あいつらは、自分達コアな仲間とそれ以外でつるむ連中、利害関係なく共存できる連中、そして子分・部下・奴隷…、軍隊で言えば兵隊ね。それらをクラス40人いれば、半数強を目安にして取り込んでる。そして、それ以外の半数弱がいわば敵ね」

「じゃあ、敵である半数近くの私たちが、クラスをまたいで水面下で協力し合い、相手のそれぞれを引き抜くってイメージかしら。こっちの陣営へ」

「引き抜きとはちょっと違うけど、今はそんなところで捉えといて。でね…、ここで肝心なのが、大義を以ってってことよ」

「大義…?」

この時、緒方さんが口にしたこの2文字に、私はある意味、覚醒されたのよね


...


「そうよ!連中がどんな不当なコトをしたとしても、売り言葉で買い言葉なら、所詮は奴らの土俵に乗っちゃってるから…。それではダメ。こっちの仕掛けには、常に見かけだけでも正論・正義・スジ…、これらを伴わせて、然るべき場面では先生を味方に付ける…」

彼女は明快極まる理論で力強く私に語りかけてくれてた

うん…!

文句なく心を惹き付けられるものがあったわ

「なるほど…。それには、クラス替えがあってまだ新学期が始まったばかりだから、まずはクラス全体40人、それぞれのすみ分けができてからってことね」

ここで私は、端的に確認した

「そうなるわ。それででね…、その際は何と言っても2年4クラス中、桃子が仕切るあなたの4組が、アイツから”周辺”をもぎ取って孤立させることこそ最重要になるの。…だから、あなたには一番大変な役割を背負わすことになるんだけど、そっちの動きには私が他の3クラスを先導して協力していくつもりよ。それで、やってもらえるかしら?」

「緒方さんの計画には文句なく賛同だけど、正直言って、私には荷が重いかな…」

これ、この時は私の正直な気持ちだったなあ…

私なんかがクラスをそういう方向”へ誘導するなんてね

自信なかったわ、完全…

ところが…

...


緒方さん、ニヤッとして、隣に立っいたキクと顔を見合わせてね…

「ううん。あなたなら桃子と十分戦えるわ。いえ、あなたにしかできない…。実際にこうして直に会って、そう確信できたわ」

「…」

私はすぐに返事を返せなかった

何でそこまで断言できるんだろうって、そんな素朴な疑問がね…