その4
夏美



あれは約半年前の、2年に進級して間もなくのことだったわ

「…ああ、夏美。この人が今度2組で一緒になった緒方さんよ」

「相川さん、緒方です。あなたのことは菊川さんからよく伺ったわ。とにかく、これからよろしくね」

「相川です。こちらこそよろしく…」

教室とは階の違う階段の踊り場で、私たち3人の、まあ、ひそひそ話が始まったわ


...


「1年の時、菊川さんたちのグループでリーダー格だったそうね、相川さんは…」

「そんな大げさなもんじゃないよ。キク、アンタまたホラ吹きまくってんじゃないのー!」

「ハハハ…、本当のことしか言ってないわよ、私は。…夏美、それで、この緒方さんはさ、アンタと連携して”例の計画”を実行に移したいそうよ」

「…大まかな話はキクから聞いてます。その主旨もだいたいは理解できますよ、私も」

「そう。なら話が早いわ。なにしろ、今度4組であなたと一緒になった工藤桃子よ。彼女が4クラス全部、学年単位で自分たちに都合の良いシステムを作ろうと企んでる一派のボスよ」

「…」

...


「…要はそのトンデモシステムを阻止するには、工藤桃子を倒さないとならないって訳ね?」

「そうよ、相川さん。他の3クラスは桃子の所属するクラスの動きをなぞるだけ。それってさ、一見稚拙な方法に思えるけど、返ってその単純さが統率力につながるわ」

「そうよね。だって、何も考えず、ただリーダーのやること通りに行動すればいい…。そういうのって、ある意味、恐ろしいわ。独裁者に洗脳された集団みたいで」

キクの補足はとても分かりやすかったわ

「わかったわ。具体論に入ってくれる?」

私は緒方さんにそう言って説明を聞くことにしてね…