その10
夏美



私は体中がジンジンと痺れるようだったわ

クラス中が”私たち二人”の対峙に目が釘付けになってる…

その視線がなんか、今の私のエネルギーになってるって感覚なのよ

そして、そのエネルギーが私の中に取りこまれると、それは目の前の”敵”に対する闘志に転換されるの

...


「夏美ぃ…!アンタ、よくもやってくれたわねー!!」

桃子は既に顔を真っ赤にし、頭からは湯気をたてて、3メートルほど前の私へ掴みかからんばかりに激昂してる

取巻きは4組の3人だけでなく、他のクラスからも10人近くが押しかけていたわ

もっとも、私の後方も20数人が一歩も引かずに睨み合ってる

まさに一触即発よ


...



朝野さんは両手を拳にして、怯えるように口へ当てていたわ

その彼女の周りにはタッコとマユミ、ユーキらがみんなで抱きかかるように寄り添ってくれてる

「ここまで恥かかせられたんだ。私らがこのまま黙ってるとは思ってないだろうね、夏美!」

「まるで脅迫ね…。言っとくけど、恥かく材料は自分たちで全部まき散らしてるわ。ひょっとして、そんなことにも気づいてないの?桃子」

「はー⁉…こいつー‼」

その時だった…

”ガラガラガラ…”

「先生ー!!」

教室の引き戸が勢いよく開いて、担任の先生が入ってきた…


...


先生はアイコがこっちの出す合図を受けて呼びに行っていたのよね

あらかじめ、今、目の前の事態に至った経緯も告げた上で…

「…工藤、クラスの揉め事なのに、その”後ろ”は何なんだ!」

「うっ、うっ…」

「とにかく他のクラスの者は引き上げるんだ!いいな!」

先生の一喝でクラスの”仲間さんたち”が教室から去ると、桃子の周りは3人だけになった

やった~~❣

この女から引っ剥がしてやったわよ!

私はこの瞬間、心の中でこう高らかに叫んだわ

クラス中のみんなが注目するその前で…

...


こうして、秋の文化祭を巡った桃子一派との決着はつけた

以後、連中の威光は一気にその勢いを失ってね

桃子らが私らを憎む思いは伝わってきたが、不思議と私にはどこ吹く風だったのよ

そして、この一件以降、私は自分自身が意識する私を必要とする、友人、仲間、そして恋人の他、その存在を欲するもう一つの正体を知ることとなったわ

それは敵となる女…

うふふ…、そうなのよ

それってね、私を鼻につくオンナと嫌う女たちの存在だったんだわ!

だって、彼女らは、結果的に私を輝かさせる…、うん、言わば噛ませ犬を演じてくるんだもん

で…!

中2の秋、私は自分自身にこう問うたわ

”私って、そういうことなのね?”と…



ー完ー





注釈:本作は『私ってそういうこと?』発熱編につづく