11月10日

音楽の授業で作詞をした

僕は思いつくまま
一気に書き上げた

先生が近づいて来て
「達也!、おまえ作詞の才能が
あるんじゃないか?」

珍しくほめてくれた

笑ってるやつらもいた

だけど、先生は
少し真剣な顔だった

「本気で勉強してみても
いいんじゃないか?」
と、付け加えた

ギターと合わせて
曲作りでもしてみようかな?

今の僕には
行けそうな大学もないし
アーティストの道も悪くないな

父さんは高卒で働けって言うし
母さんは自分のメンツで
大学進学を望んでいる

アーティストか・・

思ってもみない進路だった

先生に認めてもらい嬉しかった

「作詞の才能があるんじゃないか?」

先生から言われた言葉を何度も
思い返した

こんな僕にもはじめて
希望が湧いた

今度、専門学校でも
探してみるか
独学でもいけるかな?

僕は大勢の前で
歌っている自分を想像した


11月17日

会社で父さんが倒れたらしい

学校から帰って来たら
ばあちゃんが泣いていた

ばあちゃんの泣いた顔なんて
僕は初めて見た

「達也、母さんは今病院に行ったよ」

僕は部屋で寝転んだ

何をしていいのかわからなかった

夜になって母さんが帰って来た

僕は恐る恐る聞いた
「父さんどうだった?」

「脳の血管が切れたんだって

これから母さん忙しくなるから
あんたにかまってる暇は
ないからね!」

鋭い目でにらまれた

ばあちゃんが“部屋にもどれ”と
目くばせをした

僕はベットでずっと考えた

とにかく金を稼がなきゃ

僕に出来ることは
そんなことしかない