カフェへの道を歩いていくと、拓海の目の前を背の高めの女性が歩いているのが見えた。白のシャツに黒のカーディガンを羽織り、下は黒いスカートを着て、黄緑のバレエシューズを履いている。モデルのような細い体に拓海は釘付けになっていた。その時である。

女性の持っていたかばんの中から手帳が落ちる。シンプルな赤い手帳だった。女性は落としたことに気付いていないようで、そのまま歩いて行く。慌てて拓海は手帳を拾い、「あの、落としましたよ!」と女性に声をかけた。

「えっ?」

女性がゆっくりと振り返る。刹那、はっきりと見えた女性の顔に拓海の心音が高鳴っていった。

「麗沙(れいさ)ちゃん……?」

その女性は、拓海が好きな芸能人に瓜二つだ。テレビ画面の中からそのまま飛び出してきたような美しい顔をしている。

目はくっきりとした二重で、大きめの涙袋があり、鼻は高く、唇はふっくらとしていて、肌は雪のように真っ白で美しい。首筋にあるホクロがどこか妖艶な雰囲気を放っており、セミロングの艶やかな黒髪が風に揺れた。

「麗沙?私の名前は、黒木(くろき)亜美ですけど……」