『彼と今度一緒に結婚式場を選びに行く予定だったんです。幸せになろう、幸せにしよう、そう誓ったばかりでした。こんなにも私を愛してくれる人に出会ったのは初めてで、最初で最後の人だと信じていました。だからこそ、犯人を絶対に許すことはできません!私が、彼の味わった痛みを全てぶつけてやりたい気持ちでいっぱいです!!』

莉乃が話した言葉は、しばらくの間拓海の頭に残り続け、ずっと怯え続けていた。だが、捜査は進展していないようで、徐々にテレビや新聞などからひき逃げ事故は姿を見せなくなった。拓海はそれにホッとし、十二月一日以外は元の日常を送れるようになっていったのである。

そして、二年前の十二月一日。

その日は拓海は休みで、朝からずっと新聞やテレビを目にしていた。ひき逃げのことが報道されていないか見るためである。だが、報道は一切されていなかったため、拓海は少しホッとしてお気に入りのカフェでランチを取ることにし、家を出た。