拓海は十杯以上のカクテルを頼み、迷うことなく飲み干していく。アルコール度数の高いものばかり頼んだため、夜中にバーを出た頃には千鳥足になっていた。

「ああ〜、スカッとした〜!!」

そのまま駐車場にフラつきながら戻った拓海は、何とそのまま車に乗り込みエンジンをかけ、そのまま運転を始めた。飲酒運転である。

アルコールのおかげで気分が上がり、鼻歌を拓海は歌っていた。車はテンションが上がったことで加速していく。その時だった。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ボウッといい気分を味わっていた拓海の前に、突然人が飛び出してきた。否、拓海の車が歩道に突っ込んでしまったのだ。拓海はブレーキをかけたものの、時すでに遅し。スーツを着た痩せ型のメガネをかけた男性は猛スピードで突っ込んだ拓海の車とぶつかり、ドンッという音が響く。

「あ、ああ……」

拓海は慌てて車から降りた。男性は頭から血を流して倒れている。意識はない。

「き、救急車……!」

拓海はスマホを取り出し、電話をかけようとしてその指が止まる。人を轢いてしまったなら、警察も呼ばなくてはならない。