莉乃は三年前、拓海がひき逃げをした被害者の婚約者だ。それに気付いた刹那、拓海の目から涙が溢れていく。

「あんたのせいで、私は最愛の人と幸せになることができなかったのよ。その気持ち、あんたにわかる？」

グッと莉乃が顔を近付けてくる。その瞳には激しい怒りがあり、拓海の口からは「ごめんなさい！！」と自然に謝罪が飛び出した。

「い、医者としての地位を失うのが怖くて逃げました。犯罪者と呼ばれたくなくて……。本当に、本当に、申し訳ありませんでした！！」

拓海は必死で頭を下げる。すると、拓海の頭から何か液体が伝っていく。顔を上げれば、莉乃が独特の臭いのする液体を頭から拓海にかけていた。この液体はーーーガソリンである。

「な、何を……」

「別に、私はあんたに謝罪なんて求めてない。私がしたかったのは復讐。法が裁かないなら私があんたを裁くわ。……知ってる？生きたまま焼かれるって一番苦しい死に方らしいわよ」